2019年09月

「ねーゆかちゃーん!」

23時過ぎた頃、テンションの高いY君からLINEが来た。

その日は飲み会だと言っていた日で、だいぶ酔いが回っているようだった。

「焼き鳥!美味しいよーー!!」

やたら食べ物の写真が送られてくるし、これは完全に酔っ払いだ。

「美味しそうだね。気をつけて帰ってね」

と送ると、今度はその飲み会の集合写真まで送られてきた。

「見て見て〜!楽しそうでしょー??」

「楽しそうですね、、」

いや、不倫相手に同僚の顔写真まで送っちゃって大丈夫なのか。。

酔っ払うと危機管理能力が落ちてしまうようだ。

「ゆかちゃんそっけなーい!」

「めっちゃ普通だよ笑」

「あー!分かった!嫉妬してるんでしょ!!」

「待って待って笑何に対しての嫉妬?笑」

「飲み会に女の子いるから拗ねてるんでしょ?俺の周りに女の子写ってたから!」

そもそも写真自体真剣に見ていなかった。。

言われて初めて気付いたくらいだ。

「言いにくいんだけど、、写真あまり見てなかったんだよね、、」

「えー?!ちょっとくらい嫉妬してよー!!」

「俺ばっかりゆかちゃんに嫉妬するの嫌だー!!」

私は思わず苦笑いしながら、

「何かごめんね、、笑」

と返した。

「俺だけがゆかちゃん好きなの?ゆかちゃんはどうなの??」

と返ってきたので、

「私も好きだよ」

と返した。

「何か、、いつもこんなこと言ってごめん。。俺、普段はもっとしっかりしてるの。。ゆかちゃんにしか見せられない面なの。。」

「分かってるよ!だから何でも言ってくれてかまわないよ!」

「ゆかちゃん。。ゆかちゃんに会いたい。。」

恐らく本当に私にしか見せていない面なんだろう。

彼みたいに普段リーダーシップを発揮して積極的に動く人ほど、実は誰かに甘えたい願望があるのかもしれない。

人は基本、誰かを愛するのと同じくらい愛されたい生き物であり、自分の理解者を求めている。

私はその比重が少し異なっていて、自分は理解されなくてもいいから相手を理解してあげたいと思っている。

Y君が何を言っても全部受け入れてあげたい。

「ゆかちゃんって一見冷たいけど、実は温かいよね」

そうだね。よく言われる。

でもそれが私の愛情表現なんだ。

お互い上手くバランスがとれていて、やっぱり私と彼は性格がとても合う。

よく恋の相談をされる女友達で、Kちゃんという非常に恋多き女性がいる。

久しぶりに彼女からLINEがきた。

「ゆかー!久しぶり!T君とは続いてるの?」

KちゃんにはT君関係の話を1から詳しく話していたので、バレて連絡が取りにくい状況を常々心配してくれていた。

「あ、いや、、実は別れてさ。で、今新しい彼がいる。。」

「へ?!いやいやいや!あんだけT君好きだったじゃん!!マジで言ってる?!」

「私もまさか違う人を好きになれるとは思ってなくて。。」

「てか!言いなさいよ!ビックリしたわよ!!」

「ごめん。。で、Kちゃんは?あの彼、長いよね?」

確かKちゃんには年下のイケメン彼氏がいて、ずっと付き合っていたはずだ。

「それがさー、、アイツ他にも女作ろうとしてて。ムカついたから別れようと思ってさ!」

「え、また?何か前もそんなようなことなかった?」

「ねー。。さっさと別れたいけど、やっぱ好きだからさー。。ゆかにも散々止められたのに、アイツのこと嫌いになれないんだよ。。」

Kちゃんの気持ちは痛いほど分かる。

私もT君を嫌いになれなかったから。

ズルズルと付き合ってしまっていたから。

「例えば新しい恋をしてみる、とか、、」

そう私が言うと、

「それも考えたけど、他の人じゃダメなんだよね、、」

「そうだよね、、」

「だからさー、ゆかに新しい彼が出来たのは本当にビビったよ!」

「自分でもビックリだね。。」

「ま、T君とは付き合い続けるの難しかったから良かったよ!ゆか、めちゃ辛そうだったからね」

「ありがとー。Kちゃんもうまく気持ちの整理がついてひょっこり素敵な人が現れるかもしれないよ」

「期待はしてない笑けど頑張るわ笑」

そうKちゃんは言い、今度電話する約束をして会話は終わった。

きっとKちゃんは今辛いんだ。

Kちゃんが私に連絡をくれる時は大抵気持ちが下がっている時で、彼に対して想い悩んでいる時だ。

本当は、もっと幸せにしてくれる人と付き合ってほしい。

でも別れられない気持ちもすごく分かるから、強くは言えない。

私にとってY君は、泥沼から引き上げてくれた救世主だ。

Kちゃんのような状況の私をものすごいパワーで助けてくれた。

Y君じゃなければ出来なかった。

そう考えると、改めてY君に感謝しなければ、と思った。

「あのさ、ゆかちゃん、、俺、、心狭いよね、、」

T君から貰ったアクセサリーを捨ててほしい、というやり取りをしてから数時間後、Y君から気弱なLINEが入った。

「え、何で?」

「だってせっかく貰った物を捨てろなんて言っちゃった」

「でも捨ててほしかったんだよね?」

「うん、、ただ後から考えたら俺ちっちぇーなって、、」

「でも捨ててほしいのが本心なんでしょ笑」

「そうなんだけどさぁー、、ちっちぇー男だとゆかちゃんに嫌われるから、、」

これは永遠に会話が終わらなさそうだ。

「これ堂々巡りだから敢えて言うけど、今更そういう部分に嫌気がさすならそもそもY君と付き合ってないよ笑」

「なに、俺のちっちぇーとこ、見抜いてたの?!」

「だってDさんから全部聞いてるし笑」

「え?!」

Dさんと言うのは2人共通の知り合いで、もっぱらY君の恋の相談相手だ。

Y君はDさんに私との恋愛事情を打ち明け、常に相談に乗ってもらっていたらしい。

そして実はDさんから、Y君が私と仲良くしている友人S君のことを勝手に私の好きな人だと勘違いし、テンパって泣きそうになりながらDさんに電話をかけてきた、という事実をだいぶ前に聞かされていた。

Dさんはそんな突っ走る癖のあるY君を見て心配になったのか、私とY君が付き合うことになった次の日、私にLINEをくれた。

「ゆかちゃん、Y君とは仲良く付き合えそう?」

「はい!すごく好きになってくれて、気遣ってくれる人なので仲良く続けられそうです!」

「こないだちらっとは話したけど、Y君さ、本気でゆかちゃんとS君が付き合うかもしれないって心配してたんだよ笑」

「そんなに心配してたんですか、、笑」

「すげーよY君笑だってあまりにも心配し過ぎて、先に取られたくないから明日にも告って来ますとか暴走しそうになって、俺必死に止めたんだから笑」

「止めてくれてありがとうございます笑多分その時に告白されていたら断ってました。。」

「だろ?笑まぁ素直で可愛いやつだからさ、幸せにしてもらいなよ笑」

「そうですね笑仲良く付き合えるように頑張ります笑」

そんなやり取りをしていたので、Y君が何を言い出しても特に何とも思わないし、嫌な気持ちになることはない。

暴走しそうな所も、勘違いしやすい所も、嫉妬しやすい所も、それらひっくるめてY君の人間性だから。

そんな人間性に惹かれたのだから。

「とにかく、私は何言われても嫌だと思わないから安心してよ!」

「ゆかちゃぁぁぁん泣」

本当に素直に生きていて羨ましいし、愛くるしい。

私みたいにすぐ感情を殺してしまう捻くれ者に比べたら、多少嫉妬深くたって何十倍も魅力的だと思う。

「ゆかちゃんに捨てさせちゃったから、やっぱりその分たーくさんプレゼントしちゃう!」

「たくさんはいらないからね笑気持ちだけ受け取るから笑ありがとう!」

「やだ!あげるの!!」

この会話もエンドレスになりそうだ。。

でも温かい気持ちにさせてくれる。

ありがとうY君。

君が好きだよ。

Tくんから貰ったアクセサリーを処分するきっかけは、意外と早くやってきた。

LINEで、髪色の話になった時だ。

「ゆかちゃん、いつも茶髪だよね!」

「でもたまに黒くするんだよー」

「見たい!黒髪なんて新鮮!写メないの?」

「あー、あったかも!」

私はアルバムを探し、何の気なしに1枚の写メを貼った。

「ほらこれ。めっちゃ黒いでしょ!」

「ほんとだー!でも似合ってるよ!」

「ありがと!」

「てかさ、この写メのゆかちゃん、可愛いイヤリングしてる!イヤリングなんて珍しいね!」

あ、と思った。

この写真を撮った時、たまたまT君から貰ったイヤリングをつけていたのだ。

ペア物だったけれど、可愛かったので普段のお出かけの時もつけていたのをすっかり忘れていた。

「あ、そう、たまにね!ほんとたまに!」

「てか黒髪とか恥ずかしいから消すね笑」

とすぐに私は画像を消した。

柄にもなくちょっと焦る私に、Y君は鋭い指摘をしてきた。

「ねぇ、これ絶対元カレと撮った写真でしょ」

「違う違う!美容院に行った帰りに撮った写真だって」

「すぐ消すなんて怪しいじゃん」

「いや、自分で見たくない写真だったから消しただけ!」

「イヤリング、貰ったやつなんでしょ!」

Y君が鋭すぎてビックリする。

「ほら、もう付けてないし、この写真かなり前のだし。。」

咄嗟に嘘をつくことが出来ず、訳の分からない言い訳をしてしまった。

それに対してY君はこう言った。

「俺、すげーガキだから。ゆかちゃんが元カレから貰ったものが今もゆかちゃんの部屋にあるの、イヤだ」

「すみません、、」

「だから、今すぐ全部捨ててほしいんだよね」

予想以上にストレートにそう言われて、ハッと目が覚めるような感覚になった。

「全部とってあっても気にしないよ、なんて口が裂けても言えないや。元カレから貰ったものが一瞬でもゆかちゃんのそばにある事が耐えられない。ごめん。」

「わかったよ。私も捨てるべきだと思ってたから。。」

「俺、こんなにもゆかちゃんの過去が気になるなんて思ってなかった。でもどうしようもないんだよね。」

「私もごめん。。捨てるから!」

「捨てた分、俺が新しく買うから。」

「いやいやいや!いらないよ!ネックレス貰ったばっかりだし!」

「俺があげたいからいいの!全部俺の記憶にしてほしい。俺からのものしか置かないで」

「わかったよ。約束するよ!」

Y君との会話を終え、やっと本当に決心がついた。

引き出しから、ピンクのネックレスと、指輪とイヤリングとブレスレットを取り出した。

T君。ごめんね。大切にするって言ったけど、T君との思い出はここまでにする。

買ってくれてありがとう。

だから私がお返しに買ってあげたあの洋服、捨てて下さい。

伝わらない想いを胸に、私はT君から貰ったアクセサリーを可愛い紙袋に丁寧に入れ、そっとゴミ袋に入れた。

何となく、ゴミ袋に向かって頭を下げた。

感謝の気持ちだった。

1つ、また1つ、T君の影か薄くなっていき、そのうちに風化していくのだろう。

Y君の一言がなければ、私は永遠に捨てられなかっただろうな。

大丈夫。私はY君がちゃんと好きだ。

だから捨てられたよ。

私、本当に前に踏み出せているんだね。

こんなことを言うとどうかと思うのだが、私は所謂「床上手」の部類に入ってしまうと思う。

男性が何をされたら喜ぶかはだいたい分かるし、何を言えば興奮するか、どこを刺激したら気持ち良くなるか、などはまぁまぁ詳しい方かもしれない。

Y君には私の経験者数が少なくないことは一発でバレたのだが、

「もう少し初心者のふりをしてほしかった」

「今まで俺以外の人をこうやって骨抜きにしてたって想像すると発狂しそう」

と恨み節さえ言われてしまった。

「でも、、ゆかちゃん上手すぎる。ずるいよこんなの。。ゆかちゃん気持ち良すぎるんだよ。。」

と結局は満足の方が勝ったらしい。

だいたい女性は攻められ待ちみたいな所があるし、積極的に男性を喜ばせようと動く人は多くないかもしれない。

だから余計にY君は感動してくれたようだ。

「女性って男性からの要求を嫌がる子多くない?」

とY君に聞かれ、

「苦手な子はいるよね。。私は喜んでもらうのが第一だから、嫌だと思ったことはないけど。」

と答えると、

「ゆかちゃん。。もう絶対離さない!!」

と強くハグされた。

私みたいなタイプがいいとは思えないけどね。。

私はハグされながら心の中で呟いた。

満足度が高いと、男性は次もまたエッチしたくなる。

デートはホテルばかりになる。

体目的なのかと疑心暗鬼になる。

負のスパイラル。

だから床上手なんて嬉しくない。

でも、、喜ぶ顔が見たくてつい奉仕してしまう。

そうやって都合のいい女にされてしまうのだ。

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