2019年10月

待ち合わせ場所に着くと、Y君はいつもと違ってスポーティーな格好をして待っていた。

「あれ、何かいつもと違うね」

「今日は仕事じゃなくてプライベートな用事だからって家を出てきたからね」

「そうなんだね。誰だか分からなかったよ!」

ラフな格好は、Y君にとても似合っていた。

Y君と目が合うと、Y君の顔が近づいてきてお互い吸い寄せられるようにキスをした。

照れ笑いをした彼は、私の手をとって歩き出した。

そうだ。

こんなに温かくて大きい手だった。

忘れてたよ。

そしてこれも思い出した。

彼の手は心をホッとさせてくれる。

あぁそうだ。

私はY君が好きだ。

「ゆかちゃん、今日の服も可愛いね!」

「ありがとう!」

「それに顔も可愛い!」

「あはは!そう言ってくれる優しい人はY君だけだよ笑」

「そんなことない!ゆかちゃんは可愛い!」

変わらないY君。

仲良く手を繋いだまま、私たちはランチを食べに街を歩いた。

デート当日。

「ゆかちゃんに早く会いたいー!楽しみ過ぎて2時間も早く起きちゃった!」

Y君から早朝にLINEが入った。

「それ遠足前の小学生だよ笑」

「そう言いながらゆかちゃんだって早いじゃん!」

「私起きるのいつもこれくらいです」

「すみません。。。」

ウキウキしているY君の姿が容易に想像できた。

「今日はどういうプランなの?」

と私が聞くと、

「また美味しいランチ連れて行ってあげるね!」

「楽しみ!その後は?」

「その後は、、その、、ゆかちゃんと2人きりになりたい、、」

とこちらの様子を伺うようなニュアンスでこう返ってきた。

「つまり?」

「その、、ホテル行きたい、、です、、」

恐らく嫌われないか心配して今日までハッキリ誘えなかったんだろうなぁと思うと、可愛く思えた。

「いいよ!」

「あ、え、ほんと?!」

「久しぶりだしね」

「体目的じゃないからね!!ゆかちゃん大切にしてるし大事にしてるしだからその、、愛したいというか、、」

必死に弁解している姿がおかしくてたまらなかった。

元々私の中ではホテルに行くつもりだったし、きっとY君も誘ってくるだろうと思っていた。

Y君にまたすべて捧げよう。

素直にそう思った。

今の旦那を除いて、長く付き合う彼氏は全員年下だ。

逆に年上は全然続かない。

そして付き合ってきた年下彼氏はみんな年上女性好きで、甘えん坊な所も共通していた。

「ねぇY君。Y君ってどんな女性が好きなの?」

そう聞いた時、

「それ聞かれると絶対年上って答えちゃう笑」

「年上好きなんだ?何で?」

「背伸びしたくないんだよね。甘えたいのかも」

とY君は答えた。

甘えたい、かぁ。

私は甘えたいという気持ちがないから年上と合わないのかな。

どっちかと言うと甘えられたい。

ただ、年上の人から甘えられると嫌悪感を抱いてしまうから、私が付き合えるのは年下かタメに限定される。

結果的に年下から好かれることが多い人生だったから私としても丁度良かった。

それに年下は若くてかっこいい。

年上が好きだったこともあったが、それは若かりし頃の話で、漠然と年上の渋さに惹かれただけだ。

何だかんだ言って、若さは正義。

そう思ってきたから、私自身も見た目の老いだけは気をつけていた。

年下君と付き合いたいなら私も釣り合うように若くいないと。。

結局は中身より見た目かよ、という話だが、婚外において1番重要なのはハッキリ言って見た目だ。

綺麗事を言うつもりはない。

我ながら性格悪いなぁとも思うが、やっぱり譲れない。

若い子好きなんて自分がオバサンになった証拠。

でも事実だしそれはそれでいい。

オバサンは若い子に恋をする。

Y君がくれたネックレスは出かける時に必ずつけている。

「いつもつけてね!」

とY君が言っていたし、つけることがもう習慣になっていた。

だから先日、

「そういえばゆかちゃん、あげたネックレスってつけてくれてるの?」

と聞かれた時に思わず、

「当たり前でしょ!いつもつけて出かけてるよ?!」

とビックリしてこう返した。

「そうなの?!ほら、ゆかちゃんって冷めたとこあるからさ、、こんなネックレスしないわよ!って実は思ってるのかなぁって。。」

「私のイメージ最悪じゃん。。」

「そんなことない!!つけてくれてすごい嬉しいよ!」

「大切な宝物だよ?」

「ゆかちゃんってそんなタイプに見えなかったよ!あげて良かった!」

「もうちょっと私へのイメージ良くしてよ笑」

「ごめん!だっていつも冷静だし、、でもそういう落ち着いたとこが好きなんだけどね!」

私はきっとY君に冷たい女だと思われている。

感情が伝わりにくいのは昔からだ。

でも彼氏から貰ったプレゼントは人一倍大切にする方だと自分では思っている。

それがちゃんとY君に伝わったかな。。

そしてふと思う。

T君が買ってくれたネックレスのことを。

別れるまで世界一大切な宝物だったネックレス。

Y君のことを考えて捨ててしまったが、やっぱり捨てるべきではなかったんじゃないか。

物が惜しい、とかではない。

うまくは言えないが、気持ちがこもったものを捨てるのは良くなかったんじゃないか。。

そう思ってしまうのは、Y君がくれたネックレスにY君の溢れんばかりの愛情が込められているから、なのかな。

もしY君と別れるようなことがあって、このネックレスを捨てなければならない時が来たら。

私は捨てることが出来るのだろうか。。

Y君が忙しいらしく、全くLINEが来なくなった。

私も自分が手がけるイベントの準備で忙しく、人との交流も多かったため、Y君と話していない時間が増えても何も思わなかった。

あまり会話もないまま月日が流れていき、1ヶ月半ぶりのデート前日のこと。

「少し時間あったら電話していい?」

と珍しく電話をしたいとLINEが入った。

丁度夕飯前で忙しかったので、

「Y君仕事中でしょ?電話くれなくてもLINEで平気だよ」

とやんわり断ると、

「ゆかちゃん、、??ゆかちゃん冷たい??俺直接話したいんだよ。。声聞きたいの。。」

と泣きそうなテンションでLINEが返ってきた。

「わかったわかった!じゃ今かけて!」

と言うと、速攻でかかってきた。

「ゆかちゃん電話かけてごめん!気になることがあって。。」

「なに?」

「昨日も今日も、ゆかちゃんのLINE、少し素っ気なくなかった?俺のこと嫌いになっちゃった?」

「え!確かに今イベントの準備で忙しいから短い文になっちゃったけど、普通だよ?」

「そうなの。。明日やっと会えるのに不安で不安で。。」

「私は本当に普通。大丈夫だよ」

「良かったぁ。あのね!ゆかちゃんにプレゼント買ったの!明日持って行く!!」

Y君はやっといつものテンションに戻り、明るくこう言った。

「ありがとう!何だろう?楽しみにしてる。あ!言ってなかったけど、、」

「何かあった?」

「こないださ、Y君、ブックカバーとブックマーカーが欲しいって言ってたじゃない?」

「言った!」

「色々探したんだけど、気に入るかは分からないけど私のセンスで買ってみたからあげるねー」

「え、、ゆかちゃん泣そんな買ってくれるなんて。。覚えててくれるなんて。。」

「あ、高い物じゃないから。。笑」

「いいの!ゆかちゃんがくれるだけで幸せなの!」

「じゃあ明日はプレゼント交換になったね」

「ほんっっとに早く会いたい!!」

その後少し話した後電話はすぐ切ったのだが、Y君の嬉しそうな声を聞けて良かったな、と思った。

正直ずっと電話もLINEも出来ていなかったから、ちょっとY君への気持ちが前より下がっていたが、私も早く会いたくなった。

電話の最後にY君はこう言った。

「ゆかちゃんのこと、いっぱい愛すから!俺なしじゃダメって思わせてあげるから!」

私はその言葉を笑いながら流したけれど、本当にそう思わせてほしい、と思った。

いっぱい愛してよ、Y君。

会えなかった時間をすべて埋めてくれるくらいに。

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